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「オランダ福祉視察ツアー研修紀行」Vol⑪~6日目 安楽死協会編~

オランダ福祉視察ツアー6日目。ツアー最終日の視察先は、オランダ安楽死協会(※正式名称は「自由意志生命の終結協会」という)とヨーロッパの多くの国やアメリカにおいても採用されている「ホームドクター(家庭医)」です。

まず最初に訪問した安楽死協会はアムステルダム市内の目の前に運河が流れる、17世紀のたたずまいを残した煉瓦ビルの2階にありました。
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安楽死法(※正式名称は「要請による生命の終結及び自死の援助審査法」)がオランダにおいて世界で初めて成立したのは2001年のことです。


なぜオランダで安楽死法は生まれたのか。
1973年、半身麻痺の母親に依頼された女医がモルヒネで死亡させるという事件が起こりました。このことをきっかけに安楽死の国民的な議論が巻き起こり、長い歴史の果てに、「安楽死は違法(殺人)だが、条件付きで容認する」という形に落ち着つき、法制化に至ります。

安楽死が認められるための条件は以下の通りです。
・本人の死を望む意志
・圧倒的に耐え難い医療的な苦しみがあり、絶望的である。死期が迫っている、他に代替手段がないこと。
・ホームドクター(家庭医)の診断とホームドクター以外のもう一人の独立した医師の診察・承認が必要etc

またその実施にあたっては
・ホームドクター(家庭医)が実行する
・飲み物(ワイン等)への薬物混入や注射(筋弛緩剤)による
・死後に検視官が調査して検証委員会に報告するetc

これらの条件からも「法律によって定められた通りに行われた」と認められた場合のみ合法で、好きな時に死ねる、簡単に死ぬことができるための「安楽死法」ではないことが理解いただけると思います。事実、申請が却下されるケースも多いそうです。※人口呼吸器を外すなど延命治療の中止にあたる行為も安楽死には相当しません。

原則的には安楽死を実行するのは本人のホームドクター(家庭医)ですが、ホームドクターが宗教上の理由等から拒否した場合には、終末期クリニックの医師が行うケースもある。※終末期クリニック(End of Life Clinic)はユトレヒトに拠点を置く、複数の医師により構成される財団法人で、2012年3月に設立された安楽死協会とはことなる組織です。

安楽死協会には23人のスタッフの他に180人のボランティアが働いています。現在の会員数は147,000人で、これは国民100人に1人の割合だそうです。

安楽死協会の役割は安楽死に関する情報の提供、会員に対する電話相談、必要があれば直接面談をする場合もあり、安楽死について相談できる家族や友人がいない場合にはここのボランティアが、その役割を担っています。

2012年度にオランダで認められた安楽死は約4,100人、最も多いケースは末期ガンで約3,200人、安楽死を希望する人の割合は年々に増え続け、安楽死を容認する医師の割合も増加傾向にあるそうですが、増加する認知症の人への対応や医師への情報提供や啓発活動等、「今後の課題も数多く抱えている」と説明を受けました。
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日本でも「いかに死ぬか」への意識は高まりつつあり、安楽死に関する議論もなされるようになってます。

いつの日か日本でも安楽死が法制化される日がやってくるのでしょうか?

日本とオランダでは、社会的背景と、その国民性に大きな違いがあるように思います。
オランダでは個人の自己決定が尊重されており、関係者が納得できるまで議論を尽くす開かれた議論好きの国民性があります。“死”というものに直面した時にでさえ、優先されるべきは本人の意思です。家族はそこに介入しない社会的なコンセンサスがあります。※日本の場合、本人の意思はもちろんのこと、それとは別に家族の意思や決定権も強くあるように思います。

なによりオランダにはホームドクター制(家庭医)があります。患者と医師との長い間に築かれた信頼関係があり、医師は患者の性格や家族との関係などすべてを知る中で、安楽死を望むことは、本当にそれは患者の意思なのか、他に方法は本当にないのか、患者との対話を繰り返し、家族からも聞いて、その上で、判断をしていきます。

このホームドクター制度の充実、インフォームドコンセントの徹底、そして医療保険制度の整備等の存在が安楽死法が整備された大きな要因になったと言えると思います。

安楽死のできる国オランダ。私は最初、「オランダは自分の生死に関しても自由な国なのか」と単純に思い込み、勘違いをしていましたが、法制化されるに至った歴史、背景。その現状や課題を知ることで、そうではないことを学びました。またここに来るまで安楽死について深く考えたことなどなかったのも正直なところでした。

今回の視察ツアーでガイドをして下さった後藤 猛さんは自身の著書「認知症の人が安楽死する国」の中で安楽死に立ち会った場面をこう記されています。
「ペーターはホームドクターにお礼をいうと、最後のお世話をお願いしますと静かに伝えた。薬の投与が終わるとホームドクターは後ろに下がった。薬の入ったワイングラスを持ったペーターの周りには、奥さん、息子さん、娘さんがいた。」

自分の愛する家族に見守られながら、自分の意思で最期を迎える。

オランダでの実例をそのまま日本に置き換えて考えることも出来ませんが、患者の「自己決定権の尊重」の風潮は日本でも年々高まっています。

安楽死が是か非か。今回の研修紀行Vol②ホスピス「デ・フィールホール」への視察でも取り上げたとおり、オランダでも全ての人が安楽死を望むわけではなく、自然死を望み、ホスピスでの最期を迎えられる方もたくさんいます。

しかし日本でも安楽死が是か非かだけにとらわれず、「自己決定権の尊重」、「よき死」をめぐる議論が今後更に進み、深化していって欲しい。そう願わずにはいられない今回の視察でした。

次回は最後の視察先、安楽死の要でもあるホームドクター(家庭医)のクリニックへの訪問をお届けします!
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